大判例

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東京地方裁判所 平成12年(ワ)7785号 判決

原告 ユニ・不動産センターこと山中義彦

被告 A総合法律事務所ことA′

右訴訟代理人弁護士 宮本岳

新田明哲

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一九〇万円及びこれに対する平成一二年四月一二日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実

1  原告は、ユニ・不動産センターの名称で個人で宅地建物取引業を営んでおり、被告は、A総合法律事務所の名称で弁護士を開業している(争いがない)。

2  平成一二年二月二九日、売主をB外八名(以下「Bら」という。)とし、買主を株式会社C産業(以下「C産業」という。)とし、売買代金を六〇九六万〇二〇〇円とする、東京都杉並区天沼二丁目所在の土地建物(以下「本件不動産」という。)についての売買契約(以下「本件売買契約」という。)が締結された。本件売買契約の契約書には、仲介人として原告の名が記載されている(以上、乙一)。

3  平成一二年四月一二日、本件不動産の売買代金六〇九六万〇二〇〇円がBらからC産業に支払われた(乙二)。

二  争点(債務不履行及び不法行為)に対する当事者の主張

1  原告の主張

(一) 原告は、売主側買主側の仲介業者であり、本件売買契約の代金完済時に、売主側であるBらから仲介手数料一九〇万円を受領する取決めになっていた。しかし、平成一二年四月一二日、Bらの顧問弁護士である被告は、Bらの代理人として、買主であるC産業から売買代金を受領する際、仲介手数料一九〇万円分の預金小切手(以下「本件小切手」という。)を受領していながら、原告がその支払いを要求すると、この手数料の中から少し寄こせと主張し、事務所を出て行けと怒鳴る等して、その支払いに応じなかった。

(二) 本件売買契約の仲介手数料の支払いについては、被告の事務所において、原告とBら及びその代理人である被告との間で契約が締結されたとみるべきである。例えば、売買代金の分別の段階に入った平成一二年三月二四日、被告から原告に対し、売買代金の分別表(甲二)がファックス送信されており、右表の中に「一九〇、預手、手数」の記載がなされているが、このことは原告の右主張を裏付ける理由の一つである。

したがって、原告に対し仲介手数料支払債務を負う被告がこれを支払わないことは、債務不履行であるから、原告は、被告に対し、債務不履行に基づく損害賠償として、仲介手数料相当額一九〇万円及び商事法定利率に基づく遅延損害金の支払いを求める。

(三) 被告の右不払いは、原告に対する不法行為にも該当するから、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、仲介手数料相当額一九〇万円及び商事法定利率に基づく遅延損害金の支払いを求める。

2  被告の反論

(一) 債務不履行について

原告は被告の債務不履行を主張するが、原告と被告との間にはその前提となるいかなる契約関係も存在しない。

被告は、原告が売主であるBらとの間でどのような内容の仲介契約を締結したのかも知らないし、被告自身、本件売買契約におけるBらの代理人でもなく、二グループに分かれていた売主らの内部調整を行っていたにすぎない。

(二) 不法行為について

確かに、被告は、Bらから本件小切手を預ったが、原告の仲介業務に不満を感じていたBらから、本件小切手を絶対に原告に交付しないよう要請されていた。本件売買契約の代理人でもなく、本件小切手についての処分権限もない被告としては、原告に対し、売主内部でもめているので支払えないと伝えるしか方法がなかった。

したがって、何ら不法行為は成立しない。

第三争点に対する判断

一  債務不履行について

原告が仲介手数料の支払いを求めることができるのは、その仲介契約を締結した相手方であるところ、本件全証拠によっても、被告がその契約の相手方であること、すなわち、原告と被告どの間で本件不動産についての仲介契約が締結された事実を認めるに足りない。

また、原告は、売買代金の分別表(甲二)が被告から送信されたことをもって、被告との間に契約関係が生じた旨を主張するようであり、被告も、Bらから本件小切手を預っていたこと自体は認めているので、以下検討する。前記第二の一の事実及び証拠(甲一、三、乙一ないし三)によれば、本件不動産の売渡承諾書の付随文書中に、売主の一人であるDに対する引越代の支払方法を被告に一任する旨の記載はあるものの、売渡承諾書自体はBら本人らから原告に対し出されており、被告の名はないこと、本件売買契約の契約書の当事者欄に一切被告は出てこないこと、売買代金の領収証にも被告の名はなく、直接、売主であるBらが買主であるC産業にこれを差し入れた形になっていること、被告は二グループに分裂していた売主らの一方から内部調整を依頼されていたこと等の事実が認められるから、これらの事実に鑑みれば、被告が、事実上、売主ら内部の調整をはかってきたことはあったとしても、本件売買契約におけるBらの正式な代理人であるとは言えず、売買代金の受領についても正式な代理人であるとは言えない(なお、仮に、被告が代理人であったとすれば、本人でなく代理人に対する原告の請求は主張自体失当ということになる)。したがって、被告が原告に本件小切手を交付しなかったことが被告の債務不履行になるとは言えず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。

以上より、被告の債務不履行を前提とする原告の請求は理由がない。

二  不法行為について

前記第二の一の事実及び前記一で認定した事実に加え、平成一二年四月一二日の席上、被告がBらから本件小切手を原告に引き渡さないよう要請されたこと(乙三)に鑑みれば、被告が本件小切手を原告に交付しなかったことが不法行為になるとは言えず、他に被告の不法行為を認めるに足りる証拠もない。

したがって、被告の不法行為を前提とする原告の請求も理由がない。

三  よって、原告の請求はいずれも理由がない。

(裁判官 釜井裕子)

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